品質管理支援所
コンセプト
表面上のHACCP、JFS、ISO、FSS Cではなく、経営に直結した品質保証を!
企業は昨今、HACCPをはじめ、JFS-A/B、ISO22000/FSSC22000などの食品安全にかかわる品質認証をこぞって取得しようとしている。その目的は3つあると思う。1つ目は、周りが認証を受けているから、我々も…という外面への懸念。2つ目は、認証を受けていないことによるリスク(受注減など)の回避。3つ目に、お客様に安全な商品を届けるという大義。全社が前面に押し出して主張するこの大義は、その後の活動を見ると「怪しい」と感じることしきりである。
企業は認証を受けるため、コンサルタント料や社員の専属化、セミナー受講費、残業代、出張費など多くの資源を投入する。取得すると「燃え尽き症候群」となって本来の目的を忘れ、書類を整備するという単なる作業を行うという結果を招いている。何より大きいのは、認証後もクレームが減らないという現実である。実際、毛髪混入や腐敗などのクレームが多発しているメーカーの半数以上が、JFS-A/B、ISO、FSSCの認証を受けている。
クレームが1つ発生すると、コストがかかる。サプライチェーンの人々が対応する時間は、リテールが10時間、ベンダーが5時間、メーカーが15時間程度。これに回収費用などを加えると、2,000-3,000千円のコストがかかることを忘れてはならない。ではなぜ、認証を受けてもクレームが発生するのか? 私は、以下の4つの理由がこの状況を悪化させていると考える。否、数十回に及ぶ品質監査で見た事実と人の発言から、断言できる。
まずは、総論の理由から。品質認証の本質を認識せず、「形」を作ることを優先している。書類やルール、保管などを重要視し、いつの間にか認証を受ける・維持することが目的化してしまう。
2つ目は、食品安全の前提である一般衛生管理が疎かになっていること。HACCPが注目され、病原性大腸菌や金属性異物など体内に入ると健康を害する「健康危害」の防止が重視されている。しかし、毛髪やビニル片、虫の混入など直接的に健康危害につながらないハザードは、PRPsの一般衛生管理に依存している。認証を得るためHACCPに注力し、このPRPsを軽視していることは、監査結果の点数からもよくわかる。
3つ目は、型にはまったCCP(連続して監視するポイント)の設定だと思われる。拠点ごとのCCPの分布は、金属探知機※1に集中している。金属片混入による喫食者の口内や消化器損傷を防ぐのは当然として、加熱温度や圧力、時間、保管温度なども重要なポイントである。にもかかわらず、「管理しやすい金属探知機をやっておけば良い」という発想になってはいないだろうか。それが、同業3社の同品目におけるCCP/OPRPの設定箇所の違い※2から見て取れる。同じ品目なのにCCPが違うのはなぜか?
4つ目は、お客様のお申し出を軽視していること。2022年度の80件以上のお申し出に対して、オブラートに包んだようなわかりにくい報告書が多く、(これは感覚で分析)「早く終わらせたい」感が顕著に表れている。本来は、修正や在庫の対応をしてクレームの再発防止に努め、その事故をマネジメントレビューのインプットとして、組織が「良くなろう」というサイクルが廻るべき。しかし、監査を行なって9.3マネジメントレビューの議事録を見ても、それがない拠点が殆どである。
クレーム発生の原因を究明して改善し、品質を安定させることは、利益を生む。無駄な労務費や廃棄製品をなくし、リピーターのお客様を増やすことにつながる。工場のエネルギー使用量が減り、廃棄製品の運搬や焼却がなくなることで、CO2排出量が下がる。イレギュラーの業務がなくなれば、従業員の残業が減り、休暇の取得も容易になって、労働環境の改善もできる。
だからこそ、「儲かる品質保証」をやるべきだろう。